「循環型社会」とは、化石燃料をなるべく使わないようにして、できるだけ環境に負担をかけない社会のことをいいます。 「循環型社会」を作るためには、まず、使った製品などをすぐごみとして捨てないようにして、つぎ に、出てしまったごみもできるだけ資源として利用するようにして、最後に、どうしても利用でき ない ものを正しく処分することが必要です。
有機農業とは「土から生まれたものは土に還るという地球上の原理・原則のサイクルの中に、人間の産業である農業を組み込んだもの」をいいます。
これは循環型社会の定義とほぼ同じことです。
紙やペットボトル、工業製品などの「物」などはリサイクルという形で、循環型社会へのアプローチがしやすいのですが、農業になるとハードルが上がります。なぜなら、現代人は化学合成された薬を飲むため、その糞尿を堆肥化して畑にまくと畑の中に残ってしまい、野菜がそれを吸収する恐れがあるからです。
では、現代で可能な循環はどのようなものになるのでしょうか? その可能性が「生ごみ」にあると考えています。人が生活する限り、必ず生ごみは出ます。キチンと分別された生ごみを堆肥にすることで、半永久的に野菜を生産することが可能なのです。 このような想いを持って循環型社会の実現を目指されています。
東京都で最大の農地がある青梅市が実家だったこと、土質が良かったことが青梅市という土地を選ばれた理由です。 この地で、東京都の個人経営の農家としては2件しかない有機農家になったのは、先にもあげた「循環型社会の実現」のためです。
- ―地元から出る有機物にこだわり、近隣の養鶏場や牧場から出る堆肥などを用いて土をつくる
- ―上記肥料を基に麦などの緑肥を育て、それを再び肥料として土に戻すことで地力をつけ、野菜を育てる最高の状態へ持っていく
- ―その土で自然の力を活かした栄養満点の有機野菜を育てる この流れの中に、人間が出した生ごみを肥料にして野菜を育て、そしてその野菜を販売する仕組みを作りたいと考えています。現実には、家庭で出る生ごみを肥料にして花の肥料にしたり、肥料として販売したりしている自治体もありますが、地域循環を目指し、野菜の生産まで仕組みにしているところは少ないのです。
地産地消――昨今ではこのような言葉もよく聞くようになりました。100年前には「身土不二運動」という言葉も既にあり、身土は人間の体のことで、不二は二つということをさしたようです。
この言葉の意味は、人間の体はその人が住んでいる土地や環境と切り離せない関係があり、その土地のものを食べてこそ体が成り立つという考えです。
- ――土地で出たものを土地で循環させて新たな作物を生み出すこと
- ――有機野菜で野菜のおいしさを最大限に引き出す生産をすること
- ――そしてこのことを仕事として成立させること
単純だけど、実現が難しいことなのです。
なぜなら、循環型社会は野菜の売り買いだけでは成立しないからです。生ごみを分別する住民、それを回収して堆肥にする行政、その堆肥を用いて野菜をつくる農家、できた野菜を販売する企業、その地域に関わる全ての人が前向きに同じベクトルで動かなければならないからです。 この実現に大学卒業後からめざしていますが、まだ実現できていません。
それは、循環型社会を目指すほどに、「野菜をつくって売るだけではダメだ」「農家の力だけでは何も変えられない」と強く感じるようになったからです。
それはこのことこそが人間の生活において、これからの未来を生きる子どもたちにとってすごく大事なことだという想いがあるからです。
「循環型社会」を実現するためには、私たち一人ひとりが、毎日の生活の中で、「リデュース(ごみを出ないようにする)」、「リユース(繰り返し使う)」、「リサイクル(使ったものを資源として再利用する)」の取組を進めていくことが大切です。 「3R(スリーアール)」は、「リデュース」、「リユース」、「リサイクル」の英単語「Reduce」、「Reuse」、「Recycle」のそれぞれの頭文字からなり、循環型社会をつくるためのキーワード(合い言葉)です。